おててがくりーむぱん2

6



久しぶりに乗る電車に、光恵の緊張はマックスに達していた。眼鏡をかけ、春恵から借りたキャップを深くかぶる。


誰かに見られているような気がする。
でも視線をあげても、誰とも目が合わない。
きっと気のせいだ。
でもずっと見られている気がしてしかたがない。


都心から少し離れたイベント会場。


ほんの少し、姿を見られればいい。
しゃべれなくてもいい。
ただ元気そうな姿を見られれば。


「ああ、やばい。わたしがストーカーみたいじゃない」
光恵は自分のこの感情を、心の中で茶化してみた。


でも本当はもっと切実で、もっと逼迫している。


今までも、孝志のスケジュールが詰まっていて会えない時があった。それでも光恵は平静でいられた。寂しいとは思ったが、こんなに焦がれる気持ちにはならなかった。


おかしい。
自分が狂いだしている。


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