おててがくりーむぱん2


イベント会場は混雑していた。ビジネスマンに混じって、若い女性達が多い。展示会に来るような人たちには見えない。目的は孝志なのだろう。


光恵は帽子をより一層深くかぶり、エントランスから広いホールへと入った。ホールからエスカレーターで降りると、広大な展示場。キャノルのブースは一番奥だ。遠目からでもよくわかる、大きな「キャノル」の文字。


あの場所に孝志がいる。


そう思うと、光恵の心はざわざわと揺らめく。


近くに行ってはいけない。
あのステージの上に孝志が昇るのを、遠くから少し見るだけ。


ステージから30メートルほど離れた、別の会社の展示ブースの脇に立った。ステージ前の混雑は尋常じゃない。報道陣にファンの人たち。みな孝志の登場を待っている。


あと3分。光恵は腕時計で確認した。
胸がどきどきする。
光恵は胸に手をあてて、大きく深呼吸した。


「ねえ」


すると突然、後ろから声をかけられた。


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