おててがくりーむぱん2


控え室に入ると、パイプ椅子に力なく座る。乱れた髪を手でかきあげて、孝志は顔を覆った。


「自分のしたことが、わかってるわね。一般人を怒鳴りつけた」
「……はい」
「おそらくキャノルのCMは契約が打ち切られる」
「はい」
「その他の仕事もおそらくなくなる」
「はい」


「聞きなさい、佐田くん」
志賀が向いのパイプ椅子に座って、孝志と膝を合わせた。孝志は顔から掌をどけて、志賀の顔を見る。彼女の顔は厳しかったが、瞳の奥には自分への気遣いが見えた。


「あなたは、このまま潰れてしまうには、惜しい人材だわ。もっともっと活躍の場を広げられる、そんな役者だと思う。今、彼女を選択しても、いずれあなたは後悔する。この仕事を手放した自分に、失望すると思うわ」
「……」
「考えなさい。自分の未来を。どうやって生きて行くのかを」


志賀はポケットから携帯を取り出し、孝志に手渡した。


「自分で決めて。あなたにこの仕事を続けたいという情熱があるのなら、わたしたちはサポートするわ。しばらく表舞台から姿を消すことになろうとも、あなたを放り出すことはしない」


孝志は自分の携帯をじっと見つめる。


「考えなさい」
志賀はそう言うと、孝志に背を向け、控え室を出て行った。


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