おててがくりーむぱん2


「通して、すいません、通して」
志賀の声が聞こえる。


孝志はあっという間にスタッフに囲われて、その混乱の渦中から助け出された。
後ろを見ると、佑司が光恵を支えて、孝志について来ている。


控え室まで来ると、志賀は「皆川さん、連れ出して」と声をかける。


「ミツ」
孝志は佑司の腕の中にいる光恵に呼びかけた。


「あなたは控え室にもどりなさい」
「でも……」
「戻りなさい」


志賀の冷たく威圧的な言葉を聞いて、孝志は黙り込んだ。
光恵は孝志を振り返ると「ごめんなさい」と言う。
彼女の頬には、涙の跡。


孝志の胸の奥が、きゅーっと潰れた。


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