おててがくりーむぱん2


両親もこの結婚を喜んでいる。
光恵にはそれが一番うれしい。


「今度こそ、よろしくお願いします」
そういって笑った父親の顔が忘れられない。いつまでも嫁に行かない娘をどうしようかと、ずっと悩んでいたに違いなかった。そう思うと、自然と涙腺が緩んでくる。


「だめだめ。まだ式も始まってないのに」
光恵はきれいに引かれたアイラインをこすらないように、ティッシュをで瞳をそっと押さえた。


「ばたーんっ」


突然、すごい勢いで控え室の扉が開かれた。


光恵は思わず「わあ」と叫び声をあげる。


「なっ、何?」
慌てて振り返ると、髪を振り乱した女性が扉の前に仁王立ちになっていた。


二十代後半の女性。肩までの栗色の髪が、爆発したように広がっている。眉をつり上げて、光恵の姿を睨みつけていた。


「ど、どなたですか?」
光恵は彼女の勢いに後じさりする。


彼女は一歩足を踏み出した。


「あなたはだまされてるわ」


そう言った。


< 181 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop