おててがくりーむぱん2

4



孝志からの連絡はない。


テレビをつけると、先日クランクアップしたというドラマの最終回の予告が流れていた。
夏が終わる。


光恵はテレビをオフにすると、玄関で靴を履いた。


「俺と結婚しよう」


佑司の言葉が、頭の中で繰り返される。彼と結婚するのであれば、両親は心から祝福してくれるだろう。彼はきっと光恵を大切にしてくれるし、光恵が思い描いたような家庭を作れるはずだ。


なぜ、佑司じゃないんだろう。
なぜわたしは、佐田孝志を愛しているんだろう。


未来が見えない人なのに。


扉を開けると、残暑特有の息苦しさを感じた。一瞬で肌に汗をかく。


光恵は鳴らない電話をジャケットのポケットに入れると、出勤するために駅へと向かった。


< 96 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop