木曜日の貴公子と幸せなウソ


私が言うと、夏江がフフッと笑う。


「さすがイケメンは言う事が違うよね。そういう事、サラッと言っちゃうんだもん」

「……そうだね」


同じイケメンでも、先輩と有坂先生は全然違う。

先輩、美雪先生にはあんな笑顔を見せてくれるのに、私には見せない。

意地悪な笑いばかり。

……どっちにしても、あんな顔をされたって全部がウソに見えるからどうでもいいけれど。


私は一度自分のクラスに戻り、ピアノの上にあったペンケースを開けた。

エプロンのポケットから一万円札と先輩のスマホの番号とアドレスが書かれたメモを出して、ペンケースにしまう。

番号とアドレスを送って欲しいと言われた。

送ってしまったら繋がりができてしまう。

しかも、今度ばかりはスマホを壊したところで先輩の前から消えられない。

この幼稚園にいる限り……。

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