木曜日の貴公子と幸せなウソ
「そう?じゃ、先に帰るね」
「うん、ごめんね……」
何で私が色々と気をつかわなきゃならないのよ。
そういうのも含めて、今日はガツンと言うんだから。
ありもしない忘れ物を取りに、自分の教室へと戻る。
外はもう暗くなっている。
10月ももう終わり。
季節は少しずつ冬に向かっていく。
楽しそうな先生たちの笑い声が、職員玄関を通り抜けて行く。
園長先生が最後に出るので、まだ職員室にいる。
私は教室の電気を消すと、更衣室へ戻って急いで着替えを済ませた。
「萌先生、お疲れ様」
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
職員玄関で靴をはいていると、園長先生が職員室の電気を消して出てきたところだった。
頭を下げると、私は玄関を出る。