木曜日の貴公子と幸せなウソ


それは、大みそかの事だった。

この日、先輩と約束をしていたんだ。

だけど前日に、急な用事が入ったから会えなくなったとメールで断られてしまった。

その後すぐに、地元の友達から電話がきて、遊ぶことになり、待ち合わせの場所に出かけた。


「……え」


行き交う人の中で、一際目立つカップルを見つけた。

1人はよく知っている成瀬先輩。

もう1人は、私の知らない女の子。

ふわふわとしたロングの髪をなびかせて、成瀬先輩に寄り添って歩いていた。

成瀬先輩にお似合いの、とても可愛らしい女の子……。


私との約束を断って、先輩が別の女の子と一緒にいるはずがない。

だから、私の見間違いなんだって、そう自分に言い聞かせた。


……だけど、それは無駄な努力となってしまった。

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