木曜日の貴公子と幸せなウソ
「……萌?本当に大丈夫?」
「え?……あ」
大みそかの事を思い返していたら、いつのまにか始業式は終わっていた。
体育館から教室へ引き上げる生徒の姿でごった返している。
「あー、心配かけてごめんね。私は平気だよ」
「本当?無理しないでよ?」
「……うん」
リサに何度も念を押された後、体育館の出入り口を見ると、成瀬先輩と目が合った。
彼は手は振らなかったけれど、優しく微笑んでくれた。
だけど、今の私にはそれに応える余裕など持っていない。
じわじわと広がる胸の痛み。
胸をおさえながら、キュッと拳をつくる。
そして私は、先輩から視線を外すように、顔をそむけた。
目をそらしてしまって、よかったのだろうか……?