木曜日の貴公子と幸せなウソ


女の人ではなく、私と同じ年くらいにしか見えない女の子。

先輩は制服だけど、隣にいる彼女は私服。

しかも、お腹が少しだけふくらんでいた。


「体調とか大丈夫?寒いし無理して動く事ないのに」

「大丈夫大丈夫」

「へー。母になると強いんだな。オレは父親になれる自信、全然持てないけど」


……父親になる自信?

今の、どういう事?


「大丈夫よ。生まれて、子どもの顔を見たら、きっと自信持てるよ」

「ハハハ」


これ以上、会話を聞いていられなかった。

力が抜けて、上手く走れなかったけれど、何とかその場から逃げ出す事はできた。

楽しみにしていた文庫の発売日の事が、頭からすっぽりと抜け落ちるほど、衝撃的だった。


……成瀬先輩が、父親になるという事が。


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