木曜日の貴公子と幸せなウソ
尾行するのは気分がいい事ではない。
先輩を信じていない証拠だもの。
誰が何と噂をしていようと、私が何も言わなければ、この時間は穏やかに続いて行く。
そんな風にこの前、思ったはずなのに。
どうして、先輩の後をつけているのだろう?
やっぱり、ケータイにストラップが付いていなかった事が一番の不安要素……?
「……え?」
先輩が向かった先は、4階の子供服売り場。
しかも、赤ちゃんの服が置いてあるブランドのお店に入って行った。
少し離れた場所から見ていた私の心臓が、ドクンと大きく反応する。
そのお店の中には、私が見たフワフワロングの女の子がいたからだ。
「お待たせ」
女の子に声をかけた先輩の声はとても優しいトーンだった。