木曜日の貴公子と幸せなウソ


この幼稚園の先生も、保護者証と同じように首から自分の名前が書かれた名札をさげている。

目の前の彼は、私の名札を見た後、私の顔を見て驚きの表情を浮かべていた。


……あの二宮萌?って言われても、どの二宮萌でしょう?


困惑しながら私は首をかしげた。


「エミ、先に靴はいて待ってて」

「はーい」


お父さんに言われて、エミちゃんは返事をしながら階段をピョンピョンと降りて行く。

目の前の彼は、お父さん……と呼ぶには失礼だけど、若い。

だけど、世の中には色々な親もいるし子どももいる。

私の価値観だけで、印象を決めてはダメだ。


「参ったな。まさかこんな風に再会するとは」

「……はい?」


やれやれとでも言いたそうに、首の後ろに手をやる彼。


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