アルマクと幻夜の月

*第二夜 2*


服屋を出てから、アスラとイフリートは食料や旅に必要なものを集めるために街をうろついていた。


アスラはアダーラの話題を出さなかった。

先ほどの老婦人のことも、もちろん亡き母のことも。

その意を汲んでか、イフリートもまた何も言わなかった。


マタルの街は活気がなかった。

王宮で教えられた通りに貧富の差は激しいらしく、時折豪奢な輿に乗って貴族が通る一方で、

道端に座り込んで物乞いをする人々を見かけた。


王都とは全く違う光景に、アスラは眉をひそめた。

アルマク王朝は各地の領主に自治を任せているが、領主が違うだけでここまで変わるものなのか。


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