アルマクと幻夜の月
「あたしが、あんな言葉に騙されるほど馬鹿だと思ったのか? あの王子があたしのことを何とも思っていないことなんて、考えなくてもわかる」
アスラに怒ったように言われて、今度はイフリートが黙り込んだ。
「何をそんなに心配しているんだ? あたしがあの王子にほいほいついて行くと、本気で思ったのか?」
たしかに、アスラとイフリートは互いのことをよく知っているわけではない。
だが、自分がそれほど愚かだと思われていると、アスラは思わなかった。
「……あたしは、おまえの主だろう。それなのに、そんなに信用できないか?」
言葉にしてしまうと、わずかに胸が痛んだ。
アスラの苦しげな表情を見て、イフリートは自身も苦しげに顔を歪めて、首を横に振る。