アルマクと幻夜の月



アスラはそれ以上なにを言えばいいかわからずに、「そうか」とだけ言うと、

「あ、そういえば」

と、唐突に話題を変えた。


「おまえがさっき、ハイサムってやつに除名?されてたあれ。あれは何だったんだ?」


「あー…」


問われたシンヤはしばらくの間黙ったまま、考え込むようにしていたが、やがて「ま、もういいか」と独り言をつぶやいて答えた。


「あそこはな、〈イウサール〉のアジトなんだ」


「イウサール?」


「そ。盗賊団さ。つっても、ただ手当たり次第になんでも盗むわけじゃねぇんだぞ。俺らは義賊なんだ。貴族の豪邸に盗みに入って、盗んだ金や食い物はスラムのみんなで分けるんだ」


すげえだろ、と誇らしそうに言ったシンヤは、しかしすぐにその顔を曇らせてしまう。


< 167 / 282 >

この作品をシェア

pagetop