アルマクと幻夜の月
アスラはそれ以上なにを言えばいいかわからずに、「そうか」とだけ言うと、
「あ、そういえば」
と、唐突に話題を変えた。
「おまえがさっき、ハイサムってやつに除名?されてたあれ。あれは何だったんだ?」
「あー…」
問われたシンヤはしばらくの間黙ったまま、考え込むようにしていたが、やがて「ま、もういいか」と独り言をつぶやいて答えた。
「あそこはな、〈イウサール〉のアジトなんだ」
「イウサール?」
「そ。盗賊団さ。つっても、ただ手当たり次第になんでも盗むわけじゃねぇんだぞ。俺らは義賊なんだ。貴族の豪邸に盗みに入って、盗んだ金や食い物はスラムのみんなで分けるんだ」
すげえだろ、と誇らしそうに言ったシンヤは、しかしすぐにその顔を曇らせてしまう。