アルマクと幻夜の月


だが、アスラはなにもその立派さに驚いたわけではない。

それは、細かな砂で景色が薄もやのかかったように見えるマタルの街中で、異様な存在感を放っていた。

その領主の館の前、路上に展示するかのように置かれた、丸いそれ。


首。だった。


おそらくは、アスラとそう年の変わらない少年の、首から上。

だけど少年に似つかわしくない、深い諦めと絶望を開いた目に宿している。


「あれは……あいつは、〈イウサール〉の頭領だったんだ」


アスラが何も尋ねなくても、シンヤは静かに語りだした。


「え、でも、頭領はハイサムじゃ……」


「違う。ハイサムは、アーデルの死んだ後になって頭領ぶりだしただけだ。みんなハイサムを認めてはいるが、心のどっかではアーデルじゃないと駄目だって、思ってる」


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