アルマクと幻夜の月
どうやらイフリートの傷が治るのを見られたらしい。
厄介なことになったぞ、と、アスラは苦虫を噛み潰したような顔をする。
どうしたものか、と思ったとき、シンヤが「とりあえずは――」と声を上げた。
「怪我の手当てをしようよ。話はそれからだ」
ごもっとも、と頷きかけて、アスラはふと「あれ?」とつぶやいた。
――傷口が痛まないのだ。
身を起こして見ると、流れた血の跡はついているものの、いつの間にか傷がきれいにふさがっていた。
こんなことができるのは一人しかいない。
ぐりん、と音が鳴りそうなほどの勢いで、アスラはイフリートを振り返った。
そうしてすぐに、顔をしかめてよろめいた。
急に頭を動かしたからか、ひどい目眩を起こしたのだ。
倒れそうになったところをイフリートは抱きとめ、そのままアスラの肩と膝の裏に手をかけると、軽々と横抱きにする。