アルマクと幻夜の月


一年ぶりに見るナズリは、いつもアスラへ向けられていたのと同じ、優しい眼をしていた。

――だが。


「……母上、ずいぶんやつれてしまわれましたね……」



アスラの知る一年前のナズリと比べて、ずいぶんと痩せた。

白くふっくらとして陶器のようになめらかだった頬はこけて、肌にはくすみや皺が増えた。

黒く豊かな長い髪には所々白が混じり、すこし薄くなったように見える。



優しかったナズリがアスラを遠ざけ、会わぬようになって一年。

一年で、ここまでやつれてしまった。



――やはりもう長くはないのだろう。


だからこそ、スルターナのやろうとしていることが許せなかった。

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