大切なもの
母親

始まり

あんたなんて産まなきゃよかった。
弟に比べてなんであんたはこんなに出来が悪いの?
私の娘なのに
どうしてなのよ・・・?
きっと父親に似てるのよね
本当に大嫌い・・・。
早くあたしの前から消えてくれない?


幼い頃からまじないのように何回も何百回も
繰り返されてきたこのセリフ
なんで
なんであたしなんかを産んだのよ?
そこまで嫌いなら小さい頃に施設に預ける事だって出来たでしょう?
どうして?
どうして?


質問を繰り返せば繰り返すほど
返ってくるのは残酷な言葉ばかり


私が老後よぼよぼになったときに
役立たずのあんたでも役に立つかもしれないでしょ
考えたくないけれど
弟が死んだ時身代わりでいるでしょ?
あんたなら結婚も出来なさそうだし。


・・・聞かなきゃ良かった。
毎回そう思うのに聞いてしまうのは
気の迷いでも良いから
大切だからよ。
と言ってもらいたかったから。


けれど
けれど
あたし沙良が20になるまで
一度たりとも言っては貰えなかったの。


親からの無償の愛
  なんてそんなものあるわけないじゃない?
少なくともあたしには。
母親からの愛なんてもらってはないの。


朝ごはんも弟の分だけ。
あたしと父親はなし。


PTA行くわねって行って
何度もパチンコへ。


風邪引いた時も
バカでも風邪ひくんだね。
バカだから死なないでしょう?
って・・・。
ペットボトルの水1本。
薬も熱さましもなし。
そのまま仕事に行って
帰ってくるとギャンブルの匂い。


・・・いつだって
そうだった・・・。
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