僕を止めてください 【小説】
マスターがドアを開いたとき、暗い部屋の奥のソファに小島さんと男の人がいるのが見えた。スーツを着たサラリーマンみたいな人だった。
あの時と同じ部屋。マスターが二人に告げた。
「来たよ」
マスターは僕の背中を手のひらで押した。部屋に押し込まれた。僕の後ろでマスターがパタンとドアを閉めた。どうしていいかわからずに、ドアの前で棒立ちになっている僕の方に、そのサラリーマンが近づいてきた。小島さんはなにも言わずにそれを見ていた。彼は僕の前に立って、にっこり笑った。
「裕くん…だね」
「あ…はい」
「はじめまして。寺岡って言うんだ。いきなりこんなところで初めての人と会うなんて君も驚いたよね」
「えと…そうでもないです」
「え…? そうなの? 小島君から何か聞いてたの?」
「いえ…特には」
「あ、そう。落ち着いてるね。不思議な子だね君は」
「そうですか」
「座ろうか。こっちにおいでよ」
小島さんはソファの隅に座ったまま、動かなかった。目だけが僕を見ていた。僕は手前のソファに誘導されて座った。なにが始まるのかわからずに、僕は僕を見ている小島さんを見ていた。その僕にサラリーマンの人は続けた。
「今日は君に気持ちいいことしようって思ってる。イクまでね」
「そうなんですか」
「イカないんでしょ? 特殊な方法以外は」
「…そうです」
「小島君はそう言うんだよね。でも私は違うと思ってるんだ。きっと君はまだちゃんと身体が開いてないんだってね」
「そうなんですか」
「まぁ、わからないと思うよ。だってまだ感じてないんだから」
フフっとサラリーマンの人は楽しそうに笑った。僕は困った。小島さんはちゃんとこの人に伝えたんだろうか?
「僕がそういうのに興味がないこと、聞いてますか?」
「うんうん。そうだってね。でもそれは今までの話だろ?」
そう言うと、彼は僕にキスした。僕は小島さんの目つきが変わるのを見た。