僕を止めてください 【小説】
「君は結論は変わらないのかな? それとも今日会って、好きになった?」
「それは変わりません。持病が治ってて本当に良かったって思うけど」
「そうか。じゃあ、時期を見て切り出すのか。かぐや姫みたいに、月に帰りますとか言って?」
「かぐや姫は違うと思いますけど、時期は見たいと思ってます」
「でもさ、君はリミットを超えたけど、他の誰でも超えられるというわけじゃないかもよ?」
「再現性がないと?」
「おお…難しい言葉知ってるね。結構。そうだ。科学には再現性が必要だろ?」
「誰か僕以外にもっと年上の人を好きになれば良いんです」
「それは理想的だけど、出会いっていうのは神のみぞ知るってやつだからね。そうそう自分の思い通りにはいかないもんだ」
「そこに再現性がないのに、なぜ僕だけ科学性を厳密に精査される必要があるんでしょうか?」
それを聞いて寺岡さんはうーんと唸った。
「君、なかなか良い合理的な脳みそしてるね。いい加減なこと言えないなぁ。今後気をつけよう」
「でも小島さんはどこをどうやってリミットを超えられたんでしょう。なにか決定的な変化がないとそういうことって起きないような気がするんですけど。僕をスゲェって言ってたのは違うと思います。僕のせいじゃないと思うんです」
僕はずっと思ってた疑問を寺岡さんにぶつけてみた。