僕を止めてください 【小説】
「あっはははは…こりゃまいったわ。松田の負けだわ。お前も屍体なんだな!」
この人はなんかわかってるのかも、とそれを聞いて思った。僕が自分を屍体だと思ってる。その通りだと僕は彼の認識を評価した。
「そうです。そのとおりです。僕は…自分の身体が生きてるってことがいちばん苦しいです。松田さんは僕が生きてるってことを僕に突きつけたんです。まだ混乱してます。僕はずっと自分が生きてることを無視してきたのに…勃起したり、性欲を抑えられない自分をどうしていいか…まだよくわからない」
「あいつは愛されたいんだよ。欲が深いんだよ。でもそういうもんなんだ。人間はな。俺もだよ」
そう言うと僕の首にもう一度手を掛けて絞め始めた。きつく食い込む指の感触に僕は歓喜の声を上げた。
「ああっ…! くはっ…!」
「めちゃくちゃにしたいなぁ…お前憎ったらしいわ。でもそこがそそるんだろうな」
「はう…」
「殺したくなるわ…マジで」
それを聞いた途端、僕は射精した。それを聞いたらただ絞められるより何倍も気持ちいいことに僕は気づいた。気づいたすぐに僕は失神した。そのあと、痛みで気がついた。僕はソファから引きずり降ろされていて、裸で後ろ手に縛られていて、見上げると彼は無表情に僕の臀部に革ベルトを打ち下ろしていた。
「死んじまえよ…本当は死にたいんだろ? お前さ」
「は…い……あうっ…」
痛みが死につながっていくかも知れない。でも打擲は痛みを浮き彫りにした。僕が生きてる痛みを。