僕を止めてください 【小説】
身支度をして、顔を洗う。駐車場にある彼の車を見つけた。もう夜の9時を回っていた。助手席に座ると、タバコをふかした彼がシートにもたれて気だるそうな顔で僕に言った。
「行こうか?」
「……ん…」
「どうせ…もう我慢できないだろ?」
黙っていても、車は走りだした。僕の自宅マンションまでは車で5分。その間、ほとんど話しもせず、彼はアクセルを踏んだ。医大の駐車場から車が走りだした時に少しだけ言葉を交わした。
「もう、勤務終わり?」
「ああ。だから迎えに来た。俺の担当だしな。あのホトケさん」
「そうだね」
「だから…な」
そこから黙って暫く行って、車が見知ったパーキングに入って行った。そこから1分で僕の部屋だ。