アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
夢を……見ていた。
俺は甲冑を着て山道をさ迷い歩いていた。
俺の隣には幼い姫がいた。
俺はその姫を守る、護衛隊長の息子だった。
父とは海の中で離れ離れになっていた。
俺はその時、何があっても姫を守ることを父に誓った。
だから今は俺が父の代理なのだ。
姫を背中におぶって、道なき道を進む。
背後に源氏の気配を感じながら……
俺は平家の家臣だった。
そして姫は清盛公の孫だったのだ。
一般的には知られていない、平家の血筋を絶やさないために隠された姫だったのだ。
大川と呼ばれている川があった。
俺達は其処を目指していた。
川の向こう岸に行くためだった。
でも俺は姫と二人で川を見て震えていた。
断崖絶壁の下の川が真っ青だったからだ。
山に入る前は大勢いた仲間とははぐれてしまっていたが、落合場所は決めていた。
それが其処だったのだ。
だからどうしてもその川を渡らなければならなかったのだ。
ようやく中腹辺りまで来たとき、突然背後から姫を奪われた。
振り返ると、姫を脇に抱えた男が立っていた。
其処は平らな岩場になっており、その人は姫に手を上げていた。
俺はその時、金縛り状態で身動きが取れなかったのだ。
何故だか判らない。
目の前で姫が暴力を受けているのに、俺はなす術もなくただおろおろするしかなかったのだ。
殴る蹴る。
その暴力は暫く続いた。
「姫を殺さないで!!」
俺は突然叫んでいた。
言ってはいけないことだった。
だから俺は追い詰められた挙げ句に岩から落ちてしまったのだった。
その後の記憶はない。
気が付くと大川を流されていたんだ。
「姫を殺さないで」
と叫びながら……
そう……
その姫こそがきっと綾だったんだ。
だから俺は、運命を感じたのかも知れない。
俺達は渋谷で出逢う前にすでに互いを意識していたのかも知れない。
俺は甲冑を着て山道をさ迷い歩いていた。
俺の隣には幼い姫がいた。
俺はその姫を守る、護衛隊長の息子だった。
父とは海の中で離れ離れになっていた。
俺はその時、何があっても姫を守ることを父に誓った。
だから今は俺が父の代理なのだ。
姫を背中におぶって、道なき道を進む。
背後に源氏の気配を感じながら……
俺は平家の家臣だった。
そして姫は清盛公の孫だったのだ。
一般的には知られていない、平家の血筋を絶やさないために隠された姫だったのだ。
大川と呼ばれている川があった。
俺達は其処を目指していた。
川の向こう岸に行くためだった。
でも俺は姫と二人で川を見て震えていた。
断崖絶壁の下の川が真っ青だったからだ。
山に入る前は大勢いた仲間とははぐれてしまっていたが、落合場所は決めていた。
それが其処だったのだ。
だからどうしてもその川を渡らなければならなかったのだ。
ようやく中腹辺りまで来たとき、突然背後から姫を奪われた。
振り返ると、姫を脇に抱えた男が立っていた。
其処は平らな岩場になっており、その人は姫に手を上げていた。
俺はその時、金縛り状態で身動きが取れなかったのだ。
何故だか判らない。
目の前で姫が暴力を受けているのに、俺はなす術もなくただおろおろするしかなかったのだ。
殴る蹴る。
その暴力は暫く続いた。
「姫を殺さないで!!」
俺は突然叫んでいた。
言ってはいけないことだった。
だから俺は追い詰められた挙げ句に岩から落ちてしまったのだった。
その後の記憶はない。
気が付くと大川を流されていたんだ。
「姫を殺さないで」
と叫びながら……
そう……
その姫こそがきっと綾だったんだ。
だから俺は、運命を感じたのかも知れない。
俺達は渋谷で出逢う前にすでに互いを意識していたのかも知れない。