アイ・哀しみのルーツ【いのりのうた・十五歳の系図】
『今のネンショでは考えられないことだけどな』
そう前置きされながら、少年院の教官から渡されたサラの涙を読んでいた。
(少年院のことをネンショって言うのか? 新入りのマッサラをサラって言うみたいだな)
二日三日はお客さん。
で始まる詩で、リンチや地獄の日課などを嘆いた物だ。
どんな意味でこれを渡してくれたのかは判らないけど、いよいよ覚悟を決めなくてはいけない日が近付いてきたようだ。
リンチがどんな物なのか全く想像出来ない。
島でも、児童相談所で保護されていた時も経験はなかったのだった。
教官は『今のネンショでは考えられないことだけどな』と言っていた。気休めなのか、どうかは判らない。
それでも、何事もなく退院出来たらいいと思っていた。
(僕が辛坊さえすれば良いんだ)
安易にそう思っていた。
島にいた時には素直で優しい少年で通っていた。
だから大人しくしてさえいればいいと思っていたのだった。
少年院送致には前科が付かない。
そう教えてもらったからだった。
だから少年刑務所に行かされなくて良かったと思っていたのだった。
何故僕が児童相談所に居たのかは定かではない。
僕はどうやら、人を殺してしまったようだ。
母に暴力をふるっていた男性を。
記憶はない……。
でも、通報を受けて警察官がアパートに突入した時には血の付いたナイフを握っていたようだ。
母を守るためにやったことだと思い込んだ。
そうでもしなけりゃ、乗り越えられなかったんだ。
その時僕は十三歳だった。
刑法では十四歳未満の犯行は罪に問われないんだそうだ。
それで児童相談所扱いになったようだ。
僕が又母と暮らし始めたのは中学校を卒業した後だった。
僕は四月一日生まれだった。
島に旅行に来た母が、名前と生年月日を記入した迷子札を持たせてくれていたんだ。
僕はちょこまかと動き回り、少しでも目を離すと居なくなる子供だったらしい。
だから僕は捨て子じゃない。
置き去りにされた子供でもない。
島から連絡船が出た時に居ないことに気が付いたけど、引き返すことが出来なかったんだって母が話してくれた。
そう前置きされながら、少年院の教官から渡されたサラの涙を読んでいた。
(少年院のことをネンショって言うのか? 新入りのマッサラをサラって言うみたいだな)
二日三日はお客さん。
で始まる詩で、リンチや地獄の日課などを嘆いた物だ。
どんな意味でこれを渡してくれたのかは判らないけど、いよいよ覚悟を決めなくてはいけない日が近付いてきたようだ。
リンチがどんな物なのか全く想像出来ない。
島でも、児童相談所で保護されていた時も経験はなかったのだった。
教官は『今のネンショでは考えられないことだけどな』と言っていた。気休めなのか、どうかは判らない。
それでも、何事もなく退院出来たらいいと思っていた。
(僕が辛坊さえすれば良いんだ)
安易にそう思っていた。
島にいた時には素直で優しい少年で通っていた。
だから大人しくしてさえいればいいと思っていたのだった。
少年院送致には前科が付かない。
そう教えてもらったからだった。
だから少年刑務所に行かされなくて良かったと思っていたのだった。
何故僕が児童相談所に居たのかは定かではない。
僕はどうやら、人を殺してしまったようだ。
母に暴力をふるっていた男性を。
記憶はない……。
でも、通報を受けて警察官がアパートに突入した時には血の付いたナイフを握っていたようだ。
母を守るためにやったことだと思い込んだ。
そうでもしなけりゃ、乗り越えられなかったんだ。
その時僕は十三歳だった。
刑法では十四歳未満の犯行は罪に問われないんだそうだ。
それで児童相談所扱いになったようだ。
僕が又母と暮らし始めたのは中学校を卒業した後だった。
僕は四月一日生まれだった。
島に旅行に来た母が、名前と生年月日を記入した迷子札を持たせてくれていたんだ。
僕はちょこまかと動き回り、少しでも目を離すと居なくなる子供だったらしい。
だから僕は捨て子じゃない。
置き去りにされた子供でもない。
島から連絡船が出た時に居ないことに気が付いたけど、引き返すことが出来なかったんだって母が話してくれた。