ビター・スウィート
「広瀬先輩っ、おはようございます!」
翌日、会社の廊下で元気良く声をかけた私に、広瀬先輩は驚き固まった。
それもそのはず。明るい笑顔とは対象的に、私の目元は真っ赤に腫れてしまっているのだから。
「ちっ……ちー!?どうしたの!?そんなに具合悪かったの!?」
「あはは、丸一日お腹痛くて!辛すぎて泣いちゃいました!けどもう大丈夫ですっ」
明るく言ってみせた私の嘘に気付くこともなく、広瀬先輩は心配そうに私の涙袋をそっと撫でる。
「ならいいけど……言ってくれたら薬とか持ってお見舞い行ったのに」
「ありがとうございます、心配かけてすみませんでした」
その優しさがまた、心に痛いけれど嫌いになんてなれないよ。
寧ろ、昨日一日考えて思った。こんなに素敵な人に恋人がいないわけないって。
そんな広瀬先輩が選んだ彼女ならきっと素敵で、確かにショックではあるけど、その幸せを願いたい自分も、いる。
「あ、おはよう内海」
「あー。はよ」
突然聞こえた『内海』の名前。それについ過剰に反応するように振り向くと、背後からはこちらへ向かい歩いてくる内海さんがいた。
いつも通り、不機嫌そうなその目に、気まずさを隠せず目をそらす。