ビター・スウィート

大事なのは




ずっと好きだった、広瀬先輩のこと。

でもいつしかこの心を占めていたのは、鋭い目をした彼だった。





「ちー先輩、どうかしたんですかぁ?」

「へ!?」



ある日の午後。今日も仕事に励む私に、隣のデスクの菜穂ちゃんは不思議そうに問いかける、



「な、なにが!?なにかした!?」

「なんかソワソワしてるっていうかぁ、ドギマギしてるっていうかぁ…落ち着かない感じ〜?」

「そっそうかなぁ!?気のせいじゃない!?」



いつも以上に大きな声に、必死な弁解。どう見てもいつも通りではないだろうけれど、私はぶんぶんと首を横に振り否定する。



「あやしー……あ、わかった。もしかして早速新たな恋でもしちゃいましたぁ?」

「え!?」



ずばりと言って見せた菜穂ちゃんに、ギクッと跳ねる心臓。

新たな恋、なんて、そんなっ……。



「わ、私経理部に書類出してくるーーー!!!」



『そんなことない』、そう言えず逃げるようにフロアを飛び出した。


< 182 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop