ビター・スウィート



あの日、自分の気持ちを意識してから、なんだか毎日落ち着かない。



内海さんを見かけるとつい目が追いかけてしまって、ドキドキして、彼がいないときすらも瞼の裏から姿が消えない。

なんていうか、広瀬先輩のときより重症な気がする…!!



「はぁ…」



音をたてる心臓を抑え、自分を落ち着けるように息を吐いた。



「あっ、ちー!」

「へ?あ、広瀬先輩」



すると廊下の真ん中で名前を呼ばれ足を止めると、背後からやってきたのは広瀬先輩だった。



「ちょうどよかった、今ちーのところ行こうとしてたんだ。ちーはどこ行こうとしてたの?」

「あ……経理部に、書類を出しに」

「へー…手ぶらで?」

「え?あ!!」



言われてみれば、慌てて飛び出してきた私の手には紙一枚すらも持たれていないことに気付く。

菜穂ちゃんから逃げるのに、書類置いてきちゃったんだ…!もうやだ、私のバカ!

恥ずかしさに手で顔を覆う私に、広瀬先輩はふっと笑った。


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