ビター・スウィート



「っておい!紙くらいきちんと受け取れバカ!!」

「す、すみません!」



ひ、ひー!やってしまった…!

慌ててしゃがみ紙をかき集める私に、内海さんも同じようにしゃがみ込むと紙を拾い出す。

ふと見上げれば、すぐ目の前にあるその顔。動く指先と、近い距離。それらにまた、心は音をたてる。



この想いを、彼に知ってもらうには伝えるしかない。だけどどうしたら伝わるかなんて、私にはわからないから。だから、飾ることなく言葉にしよう。

言葉にして、伝える。

真っ直ぐな気持ちを。



「おい、なにボーッとしてんだよ、さっさと拾……」

「好きです」

「……は?」



ぼそ、と呟いた一言。

それはひと気のない階段に、確かに響き渡る。



「内海さんのことが、好きです」



まっすぐに目を見て言う私に、彼はひどく驚いた顔をする。

当然だろう。驚くだろう。だけど伝わってほしい。知ってほしい。私の気持ちは止まらない。



内海さんは驚きから、なにか言葉を飲み込むように堪えると、「はぁ」とため息をひとつつく。



「……いきなり、なに言ってんだか」

「すみません、いきなり……でも、」

「広瀬のことでへこんでるのは分かるが、だからって身代わりなんて作ってもお前がつらいだけだろ」

「……え……?」



返された言葉は、予想もしない一言。



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