ビター・スウィート



信じる。

永井の気持ちを、好きな人の気持ちを、信じる。



「さっ、酔い覚ましおーわりっ。今日は凌も飲ませるから覚悟してよー?」

「花音」



話を終え、店内へ戻ろうとする花音に、俺は呼び止める。

すっきりと落ち着いた気持ちは、憎んだ自分と決別しようという決意へと変わる。



あの日、気持ちを言えなかったことも、この前永井の気持ちに向き合わなかったことも。

なかったことには出来ないけれど、いくらでも向き合うことは出来るから。



「凌、なに?」

「……お前のそういう真っ直ぐなところ、好きだったよ」



『好きだった』、その言葉に花音は少し驚いて、ふっと笑う。



「うん、ありがと」





ひどい言葉で傷付けて、ごめん。

泣かせて、ごめん。

その気持ちと、きちんと向き合うから。怖がらず、伝えよう。



勇気を出して伝えてくれた君に、勇気を出して、『好き』の気持ちを。




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