ビター・スウィート

苦くて、甘い




涙が、止まらなかった。

あの日の内海さんの言葉と、拒むような瞳に。



『広瀬の代わりになれるほど、俺は優しくなんてねーよ』



やっぱり、そう思われていたんだ。彼にも。広瀬先輩の代わり、なんて思ったことなかったのに。



胸の痛みを紛らわすように、その日から仕事を詰め込んだ。

ちょうど新規の開発チームの仕事もあって、毎日忙しくてバタバタとしていたから多少気持ちはラクになった。

彼を見かけるたび、声や名前を聞くたび、胸は痛く涙はこぼれたけれど。





「いい天気……」



そんな毎日が過ぎ、七月のある日曜日。雲ひとつない晴れ空の下、私は空を見上げた。

目の前には、『青山グリーンテラス』と書かれた建物。

身にまとう淡いミントグリーン色のワンピースの胸元には、大きめのビジューが光る。



青山グリーンテラス、ここが会場かぁ。大きくて綺麗なところ……。

青山の一等地に建つ、洋風のホテルのような建物の中を、低いヒールで一歩一歩入っていく。


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