ビター・スウィート



そう、今日は広瀬先輩の結婚パーティ。

この会場の大きなテラスで、挙式や披露宴ではなく身内や友人だけの結婚パーティという形をとるのだそう。



「会場は確か、階段を上がって二階の真ん中のドア……」



広瀬先輩からの頼みで受付という役目をもらい、集合時間より一時間早く会場へとやってきた私は、らせん階段を上り、ひと気のない静かな廊下を歩いた。



「あっ、ちー!」



いつも通りの名前を呼ぶ声に振り向くと、そこにいたのは広瀬先輩。

その姿はいつものスーツ、とは違う。真っ白なタキシードに包まれていた。



「わっ……わー!タキシード!すごい、格好良いですねぇ!」

「あはは、恥ずかしいなぁ。ちーもドレス、かわいいよ」



上から下まで真っ白なその姿は、まるで王子様のよう。柔らかな雰囲気の広瀬先輩にとてもよく似合っている。



「お嫁さんは準備中ですか?」

「うん。動き回りたいみたいだけど……妊婦だしドレスだし、座ってなさいってみんなに言われて我慢してる」



あはは、と二人の笑い声だけがその場に響いた。



「まだちょっと時間あるから……先に会場見る?」

「いいんですか?」

「うん、どうぞ」



広瀬先輩に連れられるがまま、目の前の大きなドアを開け会場内を見る。

すると、そこには広々としたテラスに置かれたテーブル。沢山の花や風船、二人の写真……綺麗だけれどどこか温かな雰囲気に包まれていた。

真っ白い柵に、青空の色がよく映える。


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