キスから始まる方程式
「やっぱり……やだよ……」
両腕で耳を塞ぐようにして頭を抱え、大きくかぶりを振る。
「ずっと、ずっと一緒だったのに……っ」
私の頭の中に、数えきれない程たくさんの翔との思い出が溢れ出してくる。
「翔が離れて行っちゃうなんて……そんなの耐えられないよ……っ」
楽しい思い出も嬉しい思い出も悲しい思い出も、みんなみんな何物にも代え難い大切なものばかりで……。
そんなたくさんの思い出をひとつとして失いたくなくて、私はそれがこぼれ落ちるのを防ぐかのように両手を胸にあてギュッと強く握りしめた。
「あたし……なんであんな大切な物捨てちゃったんだろう……っ」
今更ながらに、昨夜とった自分の行動に対し激しい後悔の念に駆られる。
指先がカタカタと震え、不甲斐ない自分に怒りさえ覚えた。