キスから始まる方程式
震える指先が徐々に桐生君の唇へと近付く。
その距離僅か数センチ。
あとちょっと……。
そう思った瞬間 ――
ガシッ
「っ!?」
寝ていたはずの桐生君の目が突然パチリと開き、私が伸ばしていた手を掴んできた。
き、桐生君!!
驚きに目を見開く私を見て、ニヤ~ッと口もとに笑いを浮かべる桐生君。
「な~なせっ! な~にしてんだ~?」
「えっ!? べ、べつに何もっ」
目を泳がせ動揺する私の顔を覗き込みながら、なおも桐生君が愉しげに続ける。
「もしかして、俺のこと襲おうとしてた?」
「っ! ちがっ! そんなことしないってばっ」
「ふ~ん……。俺のこと、さっき『可愛い』って言ってたのに?」
「っ!?」
聞かれてた!? ……ってゆ~か、狸寝入り!?
私の顔が、沸騰したように一気に燃え上がる。
やだっ! あんな恥ずかしいこと聞かれちゃうなんて……!
ニヤニヤと全てを見透かすように私を見つめる桐生君。
あまりの恥ずかしさに耐えられなくなり勢いよく立ち上がった私は、その場から逃げ出そうとした。……のだが……
「おっと、行かせない」
「っ!」
桐生君が先程掴んでいた私の手をグイッと引き寄せ、私の体を抱きしめてきた。