キスから始まる方程式
「んっ、やだっ! 桐生君なんてもう知らない!」
とにかく恥ずかしくて、桐生君の胸を空いたほうの手でドンドンと叩き必死に逃げようとする私。
「おいっ、こらっ、ちょっ暴れんなってっ」
「やっ! 知らないっ!!」
「いてっ! おいっ、七瀬ってば! ……ったく、しょ~がね~なぁ」
「……っ?」
「まぁでも、怒った顔も可愛いけどさ」
「っ!!」
そう言ったかと思うと、桐生君の唇が私の額にそっと触れた。
なっ……、なななっ!?
突然のキスに、私の動きと思考回路が完全に停止する。
次のことなど考える間もなく、今度は頬へと桐生君の唇が優しく触れた。
「……んっ」
思考は停止しているものの、恥ずかしいという感情はしっかりと残っておりそのまま下を向いていたのだが……。
そんな私の顎を桐生君が掴みクイッと持ち上げた。
あっ……。
桐生君と私の視線が絡み合う。
桐生君のゾクリとするほど美しい漆黒の瞳に、今にも吸い込まれてしまいそうだった。
桐生……君。
トクン……トクン……と、鼓動が高鳴る。
「七瀬……」
やがて優しい声と共に、桐生君の唇が私の唇へと降りてきた……。