キスから始まる方程式


「大丈夫」

「で、でもっ」

「俺を……信じろ」

「桐生く……ん……っ。……んっ……!」



桐生君の唇が私の唇へとゆっくり重なる。



あった……かい……。



唇から伝わる温もりが、私の中の恐怖心を溶かしてゆく。


今まであれ程不安だったのが、まるで嘘のように感じられた。





「……嫌だった……?」



そっと唇を離し、桐生君が小さな声で呟く。


返事をしようとしても頭の芯まで甘くとろけてしまうような感覚にとらわれ、うまく声が出せない。


言葉の代わりに私は、俯いてふるふると首を横に振った。



「……っ! じゃあ……もう一回」

「え? ちょ、ちょっと、こらっ! もうダメ……!……んっ……んん……っ」



油断していた私の唇に、再び桐生君の唇が降り注ぐ。



またしても訪れた甘美な時間……。


その心地よい感触に時が経つのも忘れ、私達は何度も何度も確かめ合うように繰り返し甘い口づけを交わしたのだった……――
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