キスから始まる方程式


「な……」

「翔君!」



そんな翔の声を遮るように聞こえてきた翔を呼ぶ声。



この声、もしかして……。



声の主が、パタパタと小走りに翔に駆け寄ってくる。



「もう部活終わったの?」

「あ、あぁ」

「私も今終わったところだから、一緒に帰ろうよ」

「……うん、わかった」



やっぱり……南條さん……。



途端に私の胸がザワザワとざわつき始める。



「ほら、早く行こ!」

「あぁ……」



まるで存在自体を否定するかのように私には目もくれず、翔を引っ張って行く南條さん。


そんな私をチラリと一瞥した翔は、それ以上何も言わずに南條さんに急かされるようにして部室へと消えて行った。
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