キスから始まる方程式


こんな至近距離……っ! どどど、どうしようっ!!



いつもなら気付かれないうちに逃げ出すのだが、それがかなわない程すぐそこにいるためどうすることもできない。


あれから月日が経ち、遠くから見る分にはそれなりに落ち着いて見ることができるようになったのだが、至近距離となると話は別である。


まだ気まずさと、どう接してよいかわからない戸惑いとで、平静を装うことなどとてもできなかった。



べ、べつにもう私が好きなのは桐生君なんだから、いちいちこんなことで怯むことないんだよねっ……。



なんとかして落ち着きを取り戻そうと、必死になって思いを巡らせる。


そうこうあがいている内に、翔もこちらに気が付いたらしく驚いた顔で歩みを止めた。



え……? どうしてそこで止まるの……?



そのまま私に気が付かずに通り過ぎてくれればよかったのだが、翔は相変わらずこちらを見て目を見開いたまま固まっている。



どど、どうしようっ……。ものすごく気まずい……。



久しぶりにまともに顔を合わせたのだが、やはり動揺が隠せない私。



やっぱり……これ以上無理!



ついに耐え切れなくなった私が翔から目を逸らそうとした瞬間、不意に翔が口を開いた。
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