キスから始まる方程式


「桐生君……どうしたの?」

「おまっ、どうしたのじゃねーっつーの」

「え?」

「何度呼んでも上の空で、俺の前を素通りしやがって」

「えっ?えぇっ?あれ?」



桐生君の言葉にわけがわからずに、慌てふためく私。


考え事をしながら歩いているうちに、どうやらいつの間にか桐生君の前を通り過ぎていたらしい。


なおもおろおろとする私の顔を、桐生君が横からズイッと覗き込んできた。



「七瀬~……。もしかしてお前、俺以外のヤツのこと考えてただろ~……」

「へっ!?」



図星をつかれ、おもわず声が裏返る。



「やっぱりな……」

「えっ!? いや、あの、えっと……そんなことないよ?」



やばいっ! そんなに私顔に出てたのかな!?



私の言葉など信じる様子もなく、相変わらず疑いの眼差しを向けてくる桐生君。



「…………」

「あ、あの……桐生君……?」

「…………お仕置き……」

「へ……?」



しばらく無言で私のことを見つめていたかと思うと、不意にそう呟き唇を重ねてきた。
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