キスから始まる方程式
突然のことに目を見開いたまま硬直する私。
しかし一瞬だけ触れると桐生君はすぐさま唇を離し私の頬に手をあて、再び顔を覗き込んで来た。
「っ、桐生君! こんなところじゃ人が来ちゃうっ」
「さっき確認したから大丈夫」
「大丈夫って……」
確かに現時点では周囲に誰もいないが、いつ下校する生徒が通り掛かるかわからない。
人に見られるかもしれないというスリルと、キスのドキドキとで、心臓が破裂しそうだった。
「他のヤツのこと考えてたお仕置きなんだから、これくらい当然だろ?」
「お、お仕置き……!?」
「俺のことしか……考えられないようにしてやる……」
「っ! ちょっ、待っ……んっ……っ」
私の制止も聞かずに、桐生君の唇が再び私へ降り注ぐ。
「……んっ……んん……っ」
桐生君の宣言通り、この時の私の頭の中は桐生君でいっぱいになり、先程の翔と南條さんのことなど信じられないくらいキレイサッパリどこかへ吹っ飛んでしまった。