キスから始まる方程式
◆忍び寄る影
一ヶ月後。
真っ青に澄みきった五月の空が、楽しそうに登校する生徒達を優しく見守っている。
キラキラと降り注ぐ陽光を背に感じながら校門を抜け、玄関へと差し掛かった。
普段はもっと生徒達で賑わっている玄関が、今日はいつもの時間より早いこともあってその数もまばらだ。
「はぁ……っ」
これから待ち受けているプチイベントを思い浮かべ、思わず小さな溜め息をつく。
今日少々早めの時間に登校したのも、実はこのプチイベントのためだった。
カタン
下駄箱の扉を開けると同時に、私の目に飛び込んで来た小さな紙切れ。
その紙片が更に私の心を憂鬱にさせる。
書いてある内容は、見なくても大方わかっていた。