キスから始まる方程式
キーンコーンカーンコーン……
ホームルーム開始を告げるチャイムの音が、学校中に響き渡る。
ガラッ
ほどなくして、担任の村井先生がいつものように「おーし始めるぞーっ」の声と共に教室へ入って来た。
「きり~つ! 礼っ!」
「おはよ~ございま~す」
「ちゃくせ~き!」
学級委員の号令で、生徒達が一斉に朝の挨拶をする。
「え~っ、今日は最初に編入生の紹介をするぞ~っ」
村井先生のおもわぬ一言で、静かだった教室がにわかにざわざわとざわめき始めた。
「わ~っ! 編入生だって!」
「うん、珍しいよね」
「どんな子かなぁ? かっこいい男の子がいいなぁ!」
まだ見ぬ編入生に、それぞれ思い思いの意見を言い交わす生徒達。
編入生かぁ……。確かに珍しいなぁ。しかもこんな中途半端な時期だし。
机に頬杖をつきながら、指でポンポンと頬を叩く。
一応進学校なだけあって、我が校へ入るための編入試験はそんなにやすやすと入れるような簡単なものではない。
そんなうちの学校に編入生が来るなんて、よくよく考えてみれば私が入学して以来、実に初めてのことだった。