キスから始まる方程式
そんなの……きっと私の気のせいだよね……。
頭の中をチラつく疑念を追い払うように、ブンブンとかぶりを振る。
「七瀬、どうした?」
「へっ? あははっ、べ、べつになんでもないよ」
「……そうか? ならいんだけど」
おたおたする私を、心配そうに瞳を揺らしながら見つめる桐生君。
そんな表情も今私が独占しているのかと思うと、再びなんとも言えない嬉しさがこみ上げてきた。
そうだよね。桐生君はこんなに私のことを想ってくれてるんだから、何にも心配することなんてないよね。
「ごめんね、本当に大丈夫だよ」
桐生君の瞳を覗き込み、わざと明るい声でそう伝える私。
そしてこの幸せな気持ちが桐生君にも届くよう、とびきりの笑顔を返したのだった。