キスから始まる方程式
「冬真、この子のこと紹介してよ」
え?
工藤さんの言葉に目を丸くする私。
“この子”って……私のことだよね……?
キョロキョロと落ち着きなく目を泳がせる私と桐生君の顔を交互に見ながら、工藤さんが言葉を続ける。
「べつにいいじゃな~い、紹介ぐらい。これからはこの子ともクラスメイトなんだし」
「…………」
工藤さんの言葉に、相変わらず黙ったままの桐生君。
微妙に重い空気が私へもズンとのしかかる。
どうしよう……。桐生君黙ったままだし、工藤さんは紹介してもらえるまで引く気なさそうだし……。
あわあわと落ち着きなく2人の顔を見比べていた私は、居心地の悪さに耐えかねて自ら口を開いた。
「ゆ、結城! 結城七瀬ですっ」
私の言葉に、二人の視線が集中する。
明らかに不機嫌そうな桐生君の瞳が「なんで言うんだよ」と言っているようで、チクリと胸が痛い。
「ふ~ん……結城さん……ねぇ」
そう言うと工藤さんが、突然スッと右手を出してきた。