キスから始まる方程式
な……に? いったいどーゆーこと?
桐生君の顔を窺い見ても、今はすっかり無表情で何も読み取ることができない。
冷たい桐生君……無表情……。
プレイボーイの桐生君が女の子にこんな態度とるの、初めて見た……。
こと女の子に対しては“来る者拒まず”の桐生君なのに、今の桐生君からは拒絶のオーラがピリピリと伝わってくる。
それに……“凛”って……。
今まで私以外の女の子を下の名前で呼んだことなんて、一度もなかったのに……。
互いの名前を下の名前で呼び合う……それ程までに二人の仲は親密ということなのだろうか……?
ジリジリと喉に競り上がってくる胸騒ぎを無理矢理呑み込む。
少しでも状況を把握したくて、まだ笑みを浮かべている工藤さんへゆっくりと視線を移した。
すると私の視線に気付いたのか、工藤さんが屈めた体を起こし首を傾けながら私を一瞥した。
バチン
視線と視線がぶつかり、私の体が一瞬怯む。
工藤さんはそんな私から桐生君へすぐさま視線を戻すと、再び「ねぇ」と口を開いた。