キスから始まる方程式
なんで、何も言ってくれないのかな……。
いつもだったら「七瀬は俺の女だ」って、得意げな顔ですぐに言ってくれるのに……。
心の中の影が更に色を濃くし、ジワリと広がって行く。
「ふふっ、やっぱりそうなんだ」
肯定も否定もせず狼狽える私を見て、工藤さんが微笑しながら納得したように呟いた。
そして次の瞬間……
「冬真、私のこと待っててくれなかったんだね……」
「っ!?」
―― ……えっ?
それまでとは違う不敵な笑みを浮かべ、上目遣いで桐生君を見つめる工藤さんの口から、そう零れ出たのだった。