ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
 老婆はアキラの後を追う。

「そば作りも手伝ってくれるのかい?」

「うん」

 キッチンで老婆とアキラは肩を並べる。

「おや?」

 老婆はアキラの手を見る。

「器用な手だ」

 綺麗な細長い指で、アキラは渡されたそばを鍋に入れていく。

 老婆はアキラを見上げる。

「一週間後に、この山の麓でそばの大食い大会があってね。アタシが料理をすることになってるんだけど、もしよかったら、手伝いに来てくれないかい?」

「……いいよ。ぬいぐるみ一つくれるなら」

 アキラはちらりと老婆を見た後、再び視線を鍋に戻した。

「子ネコと子ウサギ、どっちがいい?」

「どっちも」

 老婆は、アキラの背をぴしゃりと叩く。

 そして、入れ歯が落ちそうなほど、楽しそうに口をあけて笑った。
 
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