ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
「つまらなかっただろ?これが、俺がラベンダー荘に帰る一番の理由だ」

 康孝はしゃべり終えると、まぶかに帽子をかぶった。

 体中の汗は夕方の風ですっかり冷やされて、少し寒くなってきた。

「にいちゃんたち、そろそろ戻らないと真っ暗になっちまうぞ」

 気づけば、そう声をかけてきた二人組み以外、見晴台には誰もいなくなっていた。

「行くか」

 康孝が立ち上がる。

「おう」

 信也がしゃきっと立ち上がり、かおりが腰を上げるのを、腕を引っ張り助け上げた。

 アキラはかおりの荷物を背負う。

「ありがとう」

 疲労困憊したかおりは、素直に好意に甘えた。

 意地を張ったら、ラベンダー荘には間違いなくたどり着けないことを、かおりが一番良くわかっていた。

 刻々と下がっていく太陽の光を浴びた売店の横のゴミ箱に、それぞれが空になったラムネのビンを捨てに行く。

 動作こそ疲れて鈍くなっているが、それぞれの表情は別人のようにさっぱりとしたものになっていた。

 その間もずっと、康孝はキラキラと輝く四人をしっかりと目に焼き付けていた。

 喪失感と少しの後悔を感じながら、それでも愛おしい者を見るように目を細めて。
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