もう「恋」は始まっている・・・
ー 神様の悪戯 ー
バイト終了後は自宅まで帰るか悩んだが、結局バイト先でもある新宿で時間を潰し、19:30を待った。我ながら時間には几帳面なほうなので、19:30前にはアルタ前に着き、向かって右側で「金髪のロン毛でパーマ」を探した。が、それらしい人は見つからず、伸長「170㎝の私」を探してもらうことにした。時間は19:30頃だっだだろう。
「葵さんですか?」
と、金髪のロン毛でパーマにスーツという「けったいな出で立ちの青年」が現れた。
「初めまして、原田です。」
「初めまして、葵です。」
と、返事を返す。そしてこの後の一言が、私のプライドに火を着けた。
「写真で見るより背低いんですね。」
(ブッチーン!)私の中で何かが切れた。(伸長170㎝の私を捕まえて背が低いなんて・・・)
「居酒屋でいいですよね?」
と聞いてくる彼に「どこでも」と愛想の無い返事を返し、適当な客引きに連れられ店に入った。カウンター席に並んで座り、
「夕飯は?」
との質問に、もともと夕飯はあまり取らない私は「済ませたので」とこれまた愛想の無い返事を返す。
「俺、ビール飲みますね。」
と注文する彼。
「あっ、私も。」
と、取り敢えずは付き合うことに。
「ビール2つに、茄子の漬物と焼鳥お願いします。」
届いたビールジョッキの口を合わせる。
「お疲れ様です。」
業界の挨拶だ。いや、社会人の常識か?
「じゃ、早速ですが作品見ます?」
彼が返事もまたず、キャビネサイズ程の黒いポートフォリオを取り出した。この一冊が運命を変えるとは、神様はとんだ悪戯を私に仕掛けてくれたもんだ。
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